「有事」でトランプ氏は『強いドル』を容認!? 経済アナリスト 田嶋智太郎 米大統領選2020

f:id:gaitamesk:20200317142843p:plain

「有事」でトランプ氏は『強いドル』を容認!?

11月の米大統領選に向けて野党・民主党が候補者を決める予備選は、どうやら中道派のジョー・バイデン前副大統領が優勢を固めた模様である。米国内における新型コロナウイルスの感染拡大によって予備選の延期が相次いではいるものの、執筆時におけるバイデンVSサンダースの獲得代議員数(過半数は1991)は1215対910となっており、サンダース氏の逆転はかなり困難な情勢と言える。
 つまり、2020米大統領選はトランプVSバイデンの戦いとなる可能性が濃厚であり、米紙ワシントン・ポストが3月29日に行った世論調査によれば、両者の支持率は拮抗しているという。一つの焦点となってくるのは、やはり新型コロナウイルス感染拡大の選挙戦への影響だが、同調査の結果では「ウイルス対応の信頼性」でトランプ氏がバイデン氏を僅かに上回った。この点について、ポスト紙は「統計上は有意な差ではない」としており、今後の行方はまだ藪の中ではある。
 有力な米論客の中には「感染症の拡大で米経済が危機的状況に追い込まれつつある現状は、バイデン氏に有利に働く」とする向きも少なくはない。そうした論客の一人、米ジョージタウン大学のサム・ポトリッキオ教授は「もう国民は面白くて新奇な指導者を求めてはいない」、「国民の関心は有能な指導者が今より希望を持てる未来に人々を導けるかどうかに移った」などと述べており、それも一理あろう。
 米国内における新型コロナウイルスの感染拡大は、すでに様々な形で米政権の政策運営にも影響を及ぼしている。なにしろ、2月下旬以降のわずか1カ月ほどで米株価は暴落とも呼べる棒下げとなり、ついにはトランプ氏が大統領に就任して以降3年分の株価の上昇分がすべて吹き飛んでしまったのだ。
この大幅な下げによって、一時は世界中であらゆるリスク資産の投げ売りとドルキャッシュ争奪の動きが強まった。結果、世界のあらゆる通貨に対してドルが急激に上値を伸ばす事態となったわけだが、目の前で進むドル高に対するトランプ氏の受け止めは以前とは大きく異なる。かつて、些か無定見とも思えるほどにドル高を嫌気していたトランプ氏が、事ここに至って背に腹は代えられないとばかりに『強いドル政策』を容認するような姿勢を見せるようになったのである。
 既知のとおり、このほど米政権は2兆ドルにも上る史上最大規模の経済対策法案を成立させる運びとなった。その財源を無理なく手当てすると同時に、将来的な財政不安に伴うドル急落の芽をできる限り摘み取っておくことが今は肝要ということなのであろう。
 すでに、米連邦準備理事会(FRB)の機転によってドル枯渇懸念は着実に後退しているが、それでも基本的にドルは底堅い印象である。これから2番底をつけに行く可能性は残るものの、今のところ米株価は2兆ドル対策ならびにFRBとの連携を評価する格好。対するバイデン氏は民主党予備選の延期によって、目下は守勢に立たされている。良かれ悪しかれ、今は「有事」がトランプ氏に味方する格好となっている模様。形勢逆転の可能性の有無も含め、今後の選挙戦の行方が米経済と相場にどう影響するかを、本欄でじっくり考察して行くこととしたい。

Source: マネ育チャンネル